Cloudflareのネットワークは120か国以上、330都市以上に広がり、1万3000を超えるネットワークプロバイダーと相互接続して数百万のお客様に幅広いサービスを提供しています。広大なネットワークと顧客基盤を持ち、インターネットの耐障害性について独自の視点を得ることができる当社は、インターネット障害の影響を地域レベル、国レベル、およびネットワークレベルで観察することができます。
これまでも述べてきたように、この投稿は観測および確認された障害の概要を説明するものであり、当四半期中に発生した問題を網羅的に、あるいは完全にリストアップしたものではありません。検出されたトラフィック異常の広範なリストは、Cloudflare Radar Outage Centerでご覧いただけます。
第3四半期には、試験での不正防止を目的としたものを含め、政府の指示によるインターネット遮断がかなりの数ありました。第4四半期は政府の指示による遮断は1回だけで、これは抗議活動に関連したものでした。陸上ケーブルの切断により、アフリカの2か国で接続に影響が出ました。これまでも何度もありましたが、予期せぬ停電と軍事行動後の計画停電の両方によってインターネット障害が発生しました。激しい嵐や地震も、予想通り被害国でインターネット障害を引き起こしました。欧州のプロバイダー2社で保守作業中に予想外の問題が起きてインターネットが停止し、米国のいくつかの州でもVerizonの顧客が短時間とはいえ原因不明の停止を経験しました。
ケーブルの切断
ルワンダ
10月1日に現地のモバイルプロバイダーMTN Rwanda(AS36890)がXに投稿し、タンザニアとウガンダでファイバー切断が同時発生し、接続品質に影響を与える可能性があると加入者に警告しました。これらのケーブル切断の結果、現地時間12:45(協定標準時10:45)以降、インターネットトラフィックが急激に減少し始め、現地時間13:15から13:30(協定標準時11:15から11:30)にかけて完全停止しました。その後、トラフィックは急速に回復し始め、現地時間19:00(協定標準時17:00)頃に通常の水準まで回復しました。その数時間後、MTN Rwandaは、すべてのサービスが復旧したことを確認するフォローアップ記事を投稿しました。
アフリカ海底・陸上光ファイバーケーブル(AfTerFibre)マップによると、タンザニアとウガンダの南北のネットワークに加え、西のコンゴ民主共和国(DRC)のネットワークを通じた接続も可能なようです。しかし、MTN Rwandaの上流プロバイダーやピアはDRCのネットワークを介してトラフィックをルーティングしていないのかもしれません。つまり、同時と思われるファイバー切断が発生した時にバックアップパスとして使えなかったのです。
ニジェール
11月30日、地元のモバイルプロバイダーAirtel Niger(AS37531)がインターネットサービスの障害を詫びるメッセージスレッドをXに投稿し、「ニアメー・ドッソ間とニアメ・バレヤラ間で国内光ファイバーケーブルが同時に切断され、当社のインターネットサービスは全域で完全停止しています。当社の制御の範囲を超えた事態です。」と説明しました。これらの同時ファイバー切断の影響で、11月29日の現地時間17:30(協定標準時16:30)から11月30日の現地時間19:45(協定標準時18:45)までの間、サービスはほぼ完全に停止しました。
障害が解決するまでメッセージスレッドが投稿されなかったのは異常に思えます。Airtel Niger自体にバックアップ接続が無く、接続が復旧するまで情報更新の投稿ができなかった可能性があります。あるいは、スレッドの最初の投稿が「[COMMUNIQUÉ IMPORTANT📢] 」(「[重要プレスリリース📢] 」)で始まっていることを考えると、警告とお詫びはAirtelのWebサイトなどの公式チャネルで適時行われ、Xのスレッドは単にインターネットサービス再開後のフォローアップだった可能性もあります。
停電
キューバ
国内の電力インフラが不安定だと、広範囲の停電が頻発し、インターネット接続が途切れます。10月18日にキューバでそれが起こり、キューバエネルギー鉱業省はXへの投稿で「アントニオ・ギテラス発電所で予想外の故障が発生し、国家電力システムは本日午前11時に完全に断絶しました。現在、Unión Elécticaが復旧作業中です。」と述べました。この停電により、同国のインターネットトラフィックは数分で半分以下に減少しました(協定標準時15:15)。接続障害は約3日半続き、現地時間で10月21日23:00(協定標準時10月22日3:00)頃に通常の水準に戻りました。
同省は10月19日、20日に複数の状況報告を行い、全国の電力復旧に向けた作業について伝えています。10月22日の最後のX投稿は停電の終了を知らせるもので、「午後2時44分に国家電力システムが同期」と宣言しています。
キューバではその数週間後にも停電が起き、インターネット接続に影響を及ぼしました。11月6日、キューバ電気連合(Uníon Eléctica)がXに「14時48分に、非常に強いハリケーン「ラファエル」による強風が原因で国家電気システムが断絶しました。緊急時対応プロトコルを適用します。」この投稿のタイミングは、現地時間14:30(協定標準時19:30)頃に見られたキューバからのトラフィックの急減と一致します。ハリケーン「ラファエル」が島を通過した後、数日にわたり、Uníon Elécticaは電力サービスの復旧に関する更新情報を何度も投稿しました。インターネットトラフィックは11月9日の現地時間13:00(協定標準時18:00)頃にが通常の水準まで回復しましたが、電力サービスの完全復旧にはさらに数日かかりました。
12月4日にも3か月間で3回目となる全国的な停電が発生しています。その日の早朝、エネルギー鉱業省はXに、「本日午前2時8分にアントニオ・ギテラス発電所の熱電系統の自動遮断器が動作し、電気システム(SEN)が断絶しました。」と投稿しました。この発電プラントの故障による停電で、キューバからのインターネットトラフィックが大幅に減少し、現地時間2:15(協定標準時7:15)前に前週比で約60%の落ち込みが見られました。トラフィックが通常の水準に回復したのは現地時間0:30(協定標準時5:30)頃、約1日後のことです。このタイミングは、全ユニットが同期し、電力サービスが復旧したことを知らせる同省のフォローアップ投稿と一致しています。
グアドループ
10月25日のThe Guardianで、「カリブ海の仏領グアドループ島で、ストライキ中の労働者がこの領域の発電所を占拠し、全島が停電した。」と報じられました。労働者が発電所の指令室に入ったため「すべてのエンジンが緊急停止した 」と記事は伝えています。この「緊急停止」による停電で、現地時間8:30(協定標準時12:30)にトラフィックが前週比で70%近く減少しました。「影響を受けた23万世帯への電力供給の復旧は早くとも現地時間午後3時(協定標準時19:00)」との予想でしたが、インターネットトラフィックが現地時間10月26日22:00(協定標準時10月27日2:00)頃まで通常レベルに戻らなかったことからすると、復旧には予想を大幅に超える時間がかかったようです。現地時間10月26日11:00(協定標準時15:00)の政府のプレスリリースでは、復旧作業の進捗について「顧客16万人への電力供給が復旧した。未だ停電中の7万人については復旧作業が続いており、週末には通常の状態に戻る見通し。」と発表されました。また、「Orange加入者の76%がネットワーク接続を回復できた。1800世帯は依然としてインターネットなし。」とも伝えています。
ケニア
ケニアでは、2024年の第2四半期と第3四半期に停電によるインターネット障害が複数回発生し、第4四半期にも同様の事象が起こりました。Kenya PowerのXへの投稿には、現地時間12月18日1:28(協定標準時12月17日22:28)に出された「カスタマーアラート」が含まれていました。顧客に「 当社で広範囲な停電があり、西リフトと北リフトの一部を除く国の大部分に影響が出ている」ことを伝える内容です。この障害により、同国からのインターネットトラフィックは現地時間12月18日0:00(協定標準時12月17日21:00)直後から70%以上減少しました。現地時間12月18日7:35(協定標準時4:35)にKenya PowerがXに最新情報を投稿し、影響を受けたすべての地域で停電が復旧したことを報告しています。同国からのインターネットトラフィックも、その時間までにほぼ通常の水準まで回復していました。
自然災害
米国、フロリダ州
現地時間10月9日20:30(協定標準時10月10日0:30)、ハリケーン「ミルトン」はカテゴリー3の嵐としてフロリダ州に上陸しました。ミルトンの被害は広範囲に及び、洪水、倒木、送電線の垂下、家屋や事業所の損壊が起こりました。この嵐による停電とその他インフラの被害に、被災地からの避難も相まって、州レベルで顕著なインターネット接続障害をもたらしました。下のグラフに見られるように、ミルトン上陸後の10月10日のピーク時トラフィックレベルは、上陸前の数日と比べて約40%低くなっています。その後数日にわたって回復・復旧作業が行われ、避難者が自宅、学校、職場に戻ったことから、同州のインターネットトラフィックは徐々に増え始めました。
この緩やかな回復は下のマップでも見てとれます。10月10日、11日、14日の現地時間9:00(協定標準時13:00)時点でインターネットトラフィックが前週同時間比で50%以上減少していた都市を示しています。10月10日には70市以上でトラフィックが大幅に減りましたが、10月14日には10都市強になりました。
マヨット
12月14日、サイクロン「チド」はインド洋の仏領マヨットで大規模な破壊を引き起こしました。電力、水道、通信のインフラがすべて損壊し、住宅や公共施設も被害を受けました。30人以上が死亡、怪我人は数千人に上りました。このような広範囲な被害が発生したため、当然ながら同国のインターネットトラフィックも影響を受けました。チドは12月14日の未明にマヨットに上陸し、現地時間9:00(協定標準時6:00)頃にトラフィックが急減。インターネットサービスがほぼ完全な停止状態となりました。トラフィックはその後微増が続き、一週間ほどで日中帯のパターンが再び見られるようになり、ピーク時のトラフィックレベルは月末にかけて徐々に上がっていきました。2025年1月第3週の時点でも、マヨットのインターネットトラフィックはゆっくりと増加し続けていますが、チド前のレベルには至っていません。
バヌアツ
12月17日の現地時間17:46(協定標準時1:47)に、マグニチュード7.3の地震がバヌアツ共和国ポートビラの西北西24kmの地点で発生しました。同国からのインターネットトラフィックはほぼ瞬時に急減し、前週に比べ90%近く落ち込みました。アナウンスされたIPv4アドレス空間も大幅に減少しており、これは地震による被害でコアネットワークプロバイダーのインフラストラクチャもオフラインになったことを示唆しています。回復は遅く、インターネットトラフィックが通常の水準に戻ったのは12月26日の現地時間23:00(協定標準時12:00)頃でした。
The Maritime ExecutiveのWebサイトに掲載された社説では、バヌアツが現在、国際インターネット接続を、フィジーへのインターチェンジケーブルネットワーク1(ICN1)の海底ケーブル接続に依存していることが指摘されています。この社説によれば、「ケーブルランディングステーションの火事により一時的に電源が遮断され、インターネットトラフィックが停止した。接続は10日後に復旧。... 」ケーブルランディングステーションの停電復旧がトラフィックの通常水準回復のタイミングとほぼ一致していることから、停電が地震後の同国トラフィック減少の大きな要因であったと考えられます。Starlinkの衛星インターネットサービスは、10月7日にサービス可用性を発表しており、若干の冗長性を提供しています。TAMTAM海底ケーブル(バヌアツ・ニューカレドニア間)は2026年中にサービスが開始される予定で、利用可能になればインターネット接続の冗長性が増します。
政府からの指示
モザンビーク
10月25日にモザンビークで、与党モザンビーク解放戦線(FRELIMO)の再選に対する抗議活動の激化を受け、複数プロバイダーのモバイルインターネット接続が遮断されました。現地時間13:00(協定標準時11:00)頃から、AS30619(Telecomunicações de Moçambique)、AS37342(Movitel)、AS37223(Vodacom)でトラフィックの大幅な減少が観測されました。VodacomとMovitelの両社はすぐにほぼ完全なサービス停止となり、Telecomunicações de Moçambiqueでは10月26日現地時間2:00(協定標準時0:00)直前まである程度のトラフィックがありました。10月26日朝に接続が復旧し、トラフィックも現地時間8:00(協定標準時6:00)頃に戻りました。しかし、接続の復旧後も、一部のソーシャルメディアプラットフォームやメッセージングアプリケーションは利用できない状態が続きました。
それから1週間ほど経った11月3日、これらのモバイルネットワークでインターネットが再び遮断されました。現地時間20:30(協定標準時18:30)頃にこれらのネットワークのトラフィックが大幅に減少しました。接続障害は11月4日の朝8:00(協定標準時6:00)頃まで12時間近く続きました。同様の遮断(「インターネット利用禁止令」適用)は、3つのネットワークすべてで11月4日から5日、11月6日から7日にかけて、MovitelとVodacomでは11月7日から8日にかけても見られました。報道によれば、同国の運輸通信省は「『国家の破滅を回避する』ためにインターネットアクセスが制限されたことを認めた」ものの、影響を受けたサービスプロバイダーに責任を転嫁し、不正利用に気付いた時点でサービス中断措置をとることができるし、そうすることが「国民の安定と福祉」を守るという「市民の責任」であると主張しました。
軍事行動
シリア
11月9日にシリアで観測されたインターネットの接続障害は、同日未明にアレッポとイドリブの近郊をイスラエルが空爆したことによる被害が原因かもしれません。現地時間4:00(協定標準時1:00)頃に同国からのインターネットトラフィックが約80%減少し、その時点で同国のアナウンスされたIPアドレス空間も大幅に縮小しました。この障害は約4時間続き、現地時間8:00(協定標準時5:00)頃にトラフィックとアナウンスされたIPアドレス空間が通常の水準に戻りました。
都市レベルのインターネットトラフィックの内部分析で、アレッポでも同様の障害が発生していたことがわかっており、これも空爆による可能性があります。
ウクライナ
11月17日、ロシアがウクライナの電力インフラを標的としたミサイル攻撃を行ったのを受け、ウクライナ国内の複数地域で計画停電が実施されました。3年近く続くこの紛争中に何度も見られたように、これらの停電はインターネットトラフィックの中断をもたらし、サービスプロバイダーのインフラストラクチャと加入者の接続性の両方に影響を与えます。
11月17日の現地時間7:30(協定標準時5:30)から11月23日の現地時間2:00(協定標準時0:00)までの間、オデッサ、ザポリージャ、ミコライウ、スーミでインターネットトラフィックが前週より低水準で推移しました。11月17日にオデッサで前週比約50%のトラフィック減少が見られ、他の地域では11月18日に20%以上減少しました。トラフィックは、オデッサでは11月21日までに概ね回復しましたが、他の地域ではさらに数日かかりました。
そのわずか数日後、ロシアは再びウクライナの電力インフラを標的とする攻撃を行いました。この時も、ウクライナ当局は緊急停電を実施し、国内の複数地域でインターネットトラフィックに影響が出ました。11月28日の現地時間7:00(協定標準時5:00)頃から、へルソン州、ミコライウ、テルノーピリ州、リウネ、リヴィウで前週比で最大65%ものトラフィック減少が観測されました。その後の数日間、トラフィックは低いまま推移していましたが、12月1日までには概ね回復したようです。
メンテナンス
スイス、Salt Mobile
下の画像は、スイスのプロバイダーSalt Mobile(AS15796)のホームページの代わりに表示されたもので、12月3日の未明にメンテナンスによりネットワークが完全にオフラインになったと報告しています。
このサービス停止は3時間近く続き、現地時間1:25から4:20(協定標準時0:25から3:20)にかけて観測されたトラフィックはほぼゼロでした。
グリーンランド、Tusass A/S
12月10日の情報更新でTusass A/S(AS8818、旧TeleGreenland)は、同日朝の現地時間2:30から5:15(協定標準時4:30から7:15)の間にインターネットサービスの完全停止が発生した理由を説明しました。この投稿で、「前夜の2:00から6:00にかけてカナダ国内の接続の予防保全作業が行われたためですが、デンマークへの接続障害も相まって全国的に接続が切断されました。幸いなことに、デンマークへの接続障害は陸上で発生したため、簡単に修理できます。」と伝えています。下のグラフを見ると、停止中はネットワークからのトラフィックはゼロで、IPv6アドレス空間がアナウンスされず、アナウンスされたIPv4アドレス空間の量が94%減少したことがわかります。
TeleGeography社の海底ケーブルマップによると、Greenland Connectケーブルシステムはグリーンランドとカナダのニューファンドランドを結んでいます。デンマークへの接続の障害は、Greenland Connectケーブルシステムのグリーンランド・アイスランド間で発生した可能性があります。アイスランド・デンマーク間の接続は、DANICE海底ケーブルで行われています。
不明
米国、Verizon
11月12日の未明、VerizonのFiosインターネットサービスの一部の加入者にインターネット接続障害が起こりました。Outagesメーリングリストへの投稿で、Verizon Fiosの複数州にわたる大規模障害が午前0時28分(東部標準時)に始まり、バージニア、ワシントンDC、メリーランド、ニュージャージー、およびペンシルベニア州東部の一部に影響を与えたと伝えています。VerizonがFiosサービスに使用している自律システムAS701からのトラフィックは、米国東部時間0:30(協定標準時5:30)頃に約30%減少しました。州レベルでは、ペンシルベニア、デラウェア、メリーランド、ワシントンDCで、AS701からのトラフィックが50~70%減少しました。
その後のOutagesメーリングリスト投稿で、東部標準時午前3:23(協定標準時8:23)に全域で復旧したことを伝えています。復旧から約6時間後、Verizon SupportはXへの投稿でこの問題を事実として認め、「今朝方のネットワーク問題により、北東部のVerizon Fiosユーザーへのサービスが一時中断されました。問題の特定後、当社のエンジニアリングチームが迅速にサービスを復旧させました。」しかし、サービス停止の根本原因についての情報は提供されませんでした。
まとめ
上述の停止や障害の他にも、11月17日と18日にバルト海の海底ケーブルが2本切断されていますが、耐障害性の高いインターネット接続のおかげで影響は最小限に抑えられました。事故か妨害かにかかわらず、海底ケーブルインフラのセキュリティと耐障害性は重要なトピックとして引き続き議論されています。もちろん、陸上ケーブルインフラストラクチャやその他の重要なインターネットインフラストラクチャのセキュリティと耐障害性も常に重視し、嵐、地震、軍事行動、停電から迅速に復旧できるようにしなければなりません。
Cloudflare Radarチームはインターネット障害を常時監視し、観測結果をCloudflare Radar Outage Centerやソーシャルメディア、blog.cloudflare.comのブログ記事で共有しています。@CloudflareRadar(X)、noc.social/@cloudflareradar(Mastodon)、radar.cloudflare.com(Bluesky)などのソーシャルメディアでフォローしていただくか、メールでお問い合わせください。